管理職・経営者におススメする今週の1冊は、
「コミック版 世界のエリートはなぜ、この基本を大事にするのか?」 です。
皆さんは、エリートの仕事の仕方や頭の中を覗いてみたいと思ったことはないでしょうか?また、エリートは、普通の人間とは能力も考え方も飛び抜けて違うと思ったりしたことはないでしょうか?
私は、20代の頃、そのように思っていました。どうせ初めから生きる世界が違うから勝てるわけがないと思ったりもしていました。その後、私は、経営コンサルティング企業に就職し、世界的にもエリートと言われるような方々とも一緒に仕事をしてきました。そこで感じたことは、エリートは初めから生きる世界が違う方々なのではなく、今まで何を考え、どのように行動してきたかという経緯が違うからこそ、成果が出せるのだということです。
そこで、今月ご紹介したい一冊は、エリートの道を歩んできた経営コンサルタントが著者の「コミック版 世界のエリートはなぜ、この基本を大事にするのか?」です。著者は、ハーバードビジネススクールでMBA(経営学修士)を取得し、ゴールドマン・サックスやマッキンゼー・&カンパニーで活躍して来た経営者です。本書はコミック版ですが、原作は国内でシリーズ23万部、翻訳版を通じて、海外でも読まれ、35万部を超えるベストセラーになった本です。
本書のストーリーは概ね以下のようなストーリーです。ある大手家電メーカーで働く若手の社員が、普段の業務の中で仕事がうまくいかず、伸び悩んでいます。そこで、外部から招聘された経営コンサルタントから仕事上の大事な基本を学びながら、成長していきます。
その基本を6章仕立てで、48個の具体的行動として説明しています。紙面の関係上、その全てはご紹介できないので、今回はその中でも、私自身の経験も踏まえ、非常に共感深いものを見ていきたいと思います。
Ⅰ 「つながり」に投資する
本書では、人とのつながりを大事にするということが重要だと言われています。そのために、①貴重な時間とお金をつながりに投資する、②相手への興味を真摯に持ち質問する、③どんなに多忙でも週一回仕事と関係ない人に会うなどが「基本」の具体的行動として示されています。中でも特に、③の仕事と関係ない人に会うのは、私も重要だといつも感じます。理由は、同じ会社や同じ業界の人間しか会っていないと、考え方が業界の慣習で凝り固まり、同じ切り口や見方でしか議論ができず、良い解決策が生まれないからです。業界の常識が自分たちの常識になるのです。そのような状態では新たな方法や行動を試すことができません。結果、ブレークスルーが生まれなくなります。
Ⅱ 内面と外見を磨く
ここでは、内面(心・思考など)と外面(健康・服装など)を常に磨くことの重要性が述べられています。中でも、思考力を高めるためとして、①正解のない問題を考えるクセをつける、②読んだら3倍考える、③自分の頭で答えを出す、④紙とペンを手にオフィスを離れよう、などが挙げられています。
特に日本人は、受験や学校教育の影響からか、正解のない問題を考えるクセがあまりないように思います。世の中には、唯一の正解があるものなど、ほとんどありません。ビジネスの現場や企業でもそうです。様々な選択肢の中からベターなものを探していくのがビジネスであり、大げさに言うと、生きていくということでもあります。その中で、様々な情報や前提条件などの関係性を考え、分析したり、答えを出していくことを習慣化することが重要です。考えて行動して、失敗して修正するからこそ、知識や経験が蓄積され、意思決定の精度が上がっていくのだと思います。従って、常に考えるクセをつけることは万人に必要なことです。
Ⅲ 時間を支配する
時間管理をしっかりすることは言わずもがな、重要なことです。そしてここで大切なのは、長期・中期、短期の目標設定を行い、時間や課題を管理することです。本章では、短期の時間管理として、①仕事を分類して優先順位をつける、ことが挙げられています。優先度と完成までに要する時間をマトリックスにして、仕事をこなすということです。そして、長期の時間管理として、②週末に自己投資の時間をとる、が挙げられています。ビジネスパーソンとしてだけではなく、一人の人間として成長していくことは非常に重要なテーマです。私も、20代の頃から、60歳・50歳・40歳・30歳と区切って、その時にどのような人間になっていたいかを考えてきました。そして、時間軸に沿って、課題を設定し、勉強や自己研鑽をしてきました。ビジネスと全く関係のない読書や視野を広げるための新しい体験や旅行なども、新たな知識や経験となり、自分の成長へと繋がると思います。このように長期的な視点を持って、時間管理を行っていくことも非常に大事です。
Ⅳ 決定的なコミュニケーション
仕事を行う上でコミュニケーションは欠かせません。最も重要な要素です。例えば、商品開発部門がどんなに先進的な商品を開発しても顧客のニーズに沿っていなければ売れません。売れる商品を開発するためにはマーケティング部門とコミュニケーションを図っていくことが求められます。
日本人は、昔から文化的特徴として、いわゆる「あうんの呼吸」が通じる民族です。従って、仕事でもコミュニケーションをしっかり取らず進めることも多々あります。しかし、それでは、後になって重大なミスを招いたり、意味のない仕事に終わってしまうこともあります。本書では、①仕事を頼まれたらその場でイメージを共有する、②引き受けた仕事は五分限定ですぐやる、③報連相は仮説を入れて念押し型でやる、ことが基本として挙げられています。最初の段階からコミュニケーションをしっかりととり、ゴールイメージや仮説を共有したうえで仕事を進めるとスムーズに進み、あとでやり直しと言ったことも防げます。
Ⅴ 資料は商品、会議はチャンス
本章で挙げられているのは、①資料づくりは下書きに時間をかける、と
②会議で発言しないのは欠席と同じ、です。①は、実はコンサルティング業界ではよく言われることです。資料を作るときは、考えることに最大限の時間を使うべきで、考える時はパソコンを使わずに手書きで作った方が、脳が効率よく働いて、早く深く考えられると口酸っぱく言われました。実際に、アメリカの大学教授による論文では、授業中のノートを手書き、もしくはキーボードで打った場合を比べたところ、手書きの方が授業内容の理解を深め、記憶に留める効果が高いことが報告されています。
また、②ですが、会議は様々な角度から議論をし、多面的に物事を考える場です。このように目的から考えると会議で発言をしないのは仕事をしていないのと同じですよね。これもコンサルティング業界ではよく言われることです。
以上のように多面的にかつ深く考えることに重点を置くように、日々の行動から意識していくことが重要だと思います。
以上、大事にするべき仕事の基本をいくつか見てきましたが、いかがだったでしょうか?それほど、大それたことをしているようには感じないのではないかと思います。そのぐらいは、自分もやっている!と思った方もいらっしゃるかと思います。
大事なのは、普段から重要となる「基本」を徹底してやり抜くということかと思います。アメリカの調査でもビジネスやスポーツ、芸能などで成功している人に共通することは、「やり抜く力」と言われています。基本を大切にし、普段の行動から徹底してこの基本を忠実に行うことが成果をあげる重要なポイントかも知れません。