管理職・経営者におススメする今週の1冊は、「マンガで読み解く 道は開ける」です。
本書は、邦訳300万部のベストセラーである不朽の名著『道は開ける』のマンガ版です。原作は、悩みを克服する具体的な方法を解き明かし、さらにいかにして道を切り開くかが書いてあります。
マンガ版は、5つのそれぞれ独立したストーリーで描かれており、原著にある全28の原則を、分かりやすく織り込んでいます。さらに、原著の読み方と要点解説をまじえ、やさしいながらもしっかりと学べる内容になっています。
以下、28の原則の中でも、私が特に気に入っているものを実体験とともに取り上げていきたいと思います。
最悪の事態を考えて対処することが重要
著者は、悩みを解決するためには、次のように自問自答することが大事だと言っています。
- 「起こり得る最悪の事態は何か」と自問自答すること。
- やむを得ない場合には、最悪の事態を受け入れる覚悟をすること。
- それから落ち着いて最悪状態を好転させるよう努力すること。
これは、私自身も非常に重要な考え方だと思っています。
私は、中小企業診断士として10年以上、経営コンサルティングを行ってきました。専門は事業再生分野です。つまり、事業が今一つ上手く行っていない企業や経営者の支援を行うことです。また、同時に現在、子供向け教育事業を別で起業し、経営しています。何が言いたいかというと、私の場合、事業再生コンサルティングで培った経験があるので、最悪の事態が想定できます。つまり、自身で起業した会社が上手くいかないとき、どのようになるかが想定できています。従って、失敗したときのリスクをあまり悩まなくて済んでいます。逆にいうと、リスクを恐れず、さまざまなことにチャレンジできています。これは、特に経営者には重要なことだと思います。経営者の仕事は、事業展開に際し、リスクとリターンを比較し、経営判断を行うことです。常にリスクと隣り合わせの意思決定をすることで、企業は成長します。リスクを取らない経営はなかなか成長しないでしょう。経営者は常に不安や悩みを抱えています。その時に、最悪の事態を想定できるかどうか、また最悪の事態を受け入れる覚悟があれば、精神的にも非常に楽になります。
悩みの原因を考えるより行動することが大事
著者は、悩みには副作用があると言っています。苦悩は頑健な人をも病気にすると例示しています。だからこそ、悩みを分析し、解消することが大事だということです。そして悩みを減らす方法として、それが起こり得る可能性を数値化してみよと述べています。数値化して確率を考えてみると多くのことは可能性が低いと言えるということです。そして、悩みを克服する一つの方法として、多忙を維持することが重要だと言っています。
私は、事業再生コンサルティングを通して、さまざまな経営者の支援を行ってきましたが、悩みを抱えすぎる人は、病気になるケースが確かに多かったです。そして、そういう経営者は、多くの場合、悩みについて考える時間が多くなりがちで、肝心の行動に移すということが疎かになります。経営が順調でもそうでなくても、経営者としてやるべきことはたくさんあります。もちろん熟考して行動に起こすことも大切ですが、多くの事柄については、走りながら考えることも重要です。一昔前は、経営そのものやコンサルティングの世界は分析や戦略思考といった左脳的なイメージが強かったのですが、現在は、「経営はアートだ!」とも言われています。つまり右脳と左脳をいかにバランスよく使い、スピーディーに意思決定をしていくかが求められています。ITだけではなく、SNSの普及によって変化が非常に早い時代になっています。さらに、AI、IoTの時代になってくればくるほど、人間には右脳的な判断が求められてきます。
疲れる前に休むことで心身を充実させる
著者は、普段から疲労や悩みを予防し心身を充実させる方法として、昼寝でも、しばし横になっているだけでもいいから、小刻みに数十分ずつでも小憩を取ることが重要だと言っています。さらに、仕事中も、
- いつもリラックスしながら、出来るだけ楽な姿勢で働くこと
- 一日に数回、自分は余計な労働をしていないか、仕事と関係のない筋肉を使っていないかを点検すること
- 一日の終わりに、自分がどれだけ疲れているかを自問自答すること
がコツであると述べています。
最近は、昼食後の昼寝を推奨している企業も増えています。いかに精神的なストレスや肉体的な疲労を排除して仕事をしていくことが生生産性を高めるポイントだと思います。弊社も、昼寝や休憩時に横になることを推奨しています。事務所には、ソファを置いており、そこで仕事中にくつろいで生産性を高めるようにしています。さらに何か構想を練ったり考えごとをする時にも、椅子に座ってするだけではなく、ソファで横になったり、歩きながら考えたりと、さまざまな工夫をしています。これも私の実体験からくるもので、何か新しいアイデアを出すときは、身体がリラックスしている方が出やすいのです。私の場合は、就寝前に考え事をしている時や入浴中が一番アイデアが出やすいので、すぐに書き留められるように、常にその近くにメモ用紙を置いています。
以上、いくつか見てきましたが、本書は全体として、以下の構成で書かれています。
- 悩みを分析する技術
- 悩みの習慣を早期に断つ方法
- 平和と幸福をもたらす精神状態を養う方法
- 悩みを完全に克服する方法
- 批判を気にしない方法
- 疲労と悩みを予防し心身を充実させる方法
述べられている28の原則は、現代の我々の仕事や生活にも活用できるものばかりです。それが、何十年経っても今なお読み継がれている理由だと言えます。忙しい現代人にとっては、あらためて本書の内容を意識することが重要かもしれません。一度、マンガ版だけではなく、原著も手にとって読んでみてはいかがでしょうか。
ちなみに著者は、本書(原著)の読み方について、精読するだけではなく、線をつけたり、何度も繰り返し読むこと、さらに復習し、実践結果を日記につけて記録せよ、と言っています。これはPDCAを回すことと同じです。そして、とにかく行動することが最も重要だということも述べられています。
私にとっても、本書は人生のバイブルです。