管理職・経営者におススメする今週の1冊は「まんがで分かる 頭に来てもアホとは戦うな!」です。
本書は、七〇万部を突破したベストセラーであり、四月から日本テレビでもドラマ化されている話題作です。著者は、元参議院議員でもあり、日本人政治家で初めてハーバードビジネススクールのケース(事例)主人公となった方としても有名です。
本書は、主人公である四年目の社員が、社内で足を引っ張ってくる先輩や上司に対し、苛立ちを感じているところから始まります。そして、コミュニケーションコンサルタントのアドバイスを得ながら、対処方法を改善し、最終的に新企画を通すという流れの中で、本書でいうアホとの付き合い方の重要ポイントを述べています。
ところで皆さんは、自分に対し、不条理や理不尽な言動ばかりしてくる人とどのように付き合っていますか?中には真っ向から衝突して、出世コースから外れたという方もいらっしゃるのではないでしょうか?私も経営コンサルタントとして十年以上仕事をしてきて、様々なビジネスパーソンを見てきましたが、最終的に組織で出世している人は、こういう言動を上手くかわしたり、逆にそのような人を積極的に活用して目標を達成している方々がほとんどでした。
本書では、アホというのをむやみやたらと足を引っ張ってくる人のことと定義しています。そして、“アホとは戦うな!”ということを単なるコミュニケーション技術ではなく、人生戦略として捉えています。それは、時間という無駄な資源をいかに最大限活用するかが、最も大事で、アホと戦うことで浪費するべきではないということです。さらに、神経をすり減らしたり、余計なことを考えるエネルギーさえももったいないと言っています。その中で、重要だと思ったことを私の経験も交えてお伝えしていきたいと思います。
成功することのみに集中する
人生は一度しかなく、その人生は想像以上に短いということを、皆さんも年を重ねるごとに感じるのではないでしょうか。アホと出会った時にその善悪を考えるのではなく、自分にとって何が目的・目標なのか、その真理を追求することが大事だと述べられています。つまり、どのようにしたら成功するか、ということのみにエネルギーや時間を集中するということです。アホを善悪の対象として見てしまうと、打ち負かそうと考えたり、戦ったりしてしまいがちです。でも、それが目的ではないですよね。人間は、どうしても感情で動きがちです。自分の感情を上手くコントロールし、相手を気持ちよく動かすことが目的達成につながります。組織では一人の力に限界があります。周りを上手く活用することが、上司になればなるほど重要です。私が以前いた戦略系コンサルティングファームでは、いつも侃侃諤諤の議論がなされていて、端から見ると喧嘩をしているかのように感じられるのではというときも多々ありました。しかし、組織として、クライアントへバリューを出せる提案をするという目的・目標が全メンバーで一致していたので、プロジェクトが頓挫するようなことはありませんでした。全員が高いプロ意識を持って仕事をしていたのです。
プライドを捨て相手のことを徹底的に考える
真理を追求するためには、嫌な人も味方につけて、組織が一丸となって取り組むことが必要になります。その際、具体的に、どのようにして嫌な人を味方にするかがポイントとして挙げられています。本書では、嫌な人と仲良くなるには接触頻度を増やすことが重要だということです。無理矢理でもコミュニケーションをとっていく姿勢が大事です。それでも感情的に難しい場合は、したたかに相手を立てれば良いと述べられています。褒められて気分の悪い人はいないはずです。私の経験から言うと嫌な人の場合だけではなく、やる気のない部下などにも効果的です。弊社は子供向けプログラミング教室も展開していますが、モチベーションの低い子にも、簡単なお題を与えて、出来たら思い切り褒めると言うことをやっています。そうすると、瞬く間にやる気になってくれます。
さらに多様性の理解についても言及されています。多様性を理解することは、通常のビジネス活動の中でも非常に重要です。日本は同一民族なので、阿吽の呼吸でコミュニケーションが取れるケースが多いですが、海外ではそうはいきません。グローバル化が進むとともに、国内でも労働力人口の減少で外国人労働者と接することが増えてきています。今後ますます多様性を理解し、行動していくことが必要になるでしょう。そして、多様性を理解したうえで、非難しない、認める、相手の欲しがるものを提供するというカーネギー博士の提唱する“人を動かす三原則”を実行することが重要です。非難しない、認めるは当然のこととして、相手の欲しがるものを提供する姿勢は非常に重要です。皆さんは返報性の法則というものがあるのをご存知でしょうか。人は、何かを与えられるとお返しをしたくなるというものです。常に周りに何かを与えていると周りからもそういう評判がでて、お返しをしてくれるようになります。フェイスブックやツイッターなどの SNSでいつも有益な情報をあげてくれている人を良い人と思いますよね。それと同じことです。
準備と本気度が大事!
そして、最後に大切なのは、準備と本気度と言っています。人を動かしたり、組織一丸となって目標を達成するには人の心を動かす必要があります。プレゼンの準備をしっかりと行い、熱意の伝わるプレゼンが大切です。これも、嫌な人と付き合うだけではなく、どのようなビジネスシーンでも重要なことです。人間は感情で動く生き物です。熱意や本気度が伝わると、自然とモチベーションも高まるはずです。やる気が感じられない人より、本気の人たちを応援したいという人がほとんどではないでしょうか。熱意や本気度を常に、周りに語っている方は様々な面で応援してくれる人が増えてきます。最近流行りのクラウドファンディングなどもそうですよね。私もサイトを見ていて、本気度が高い、熱意のありそうな人のプロジェクトにお金を出したいと思う人が多いものだなと感じます。
本書は、タイトルからすると、人との付き合い方のような内容かと想像すると思いますが、それだけではありません。人生や、ビジネスシーンにおける考え方、行動の仕方のバイブルのような内容です。私も仕事をしてきて常に感じることがたくさん書かれています。世の中には、自分と意見や価値観が合わない人はたくさんいますし、組織の中にいると、自分の出世のために権力に迎合したり、悪事をはたらいてでも他人を蹴落とそうとする人たちも当然います。その人たちに感情的になって腹を立てても何もプラスなことは起こりません。自分の軸をぶらさず、何が目的かを常に考え、それを達成するために必要な行動をしていくことが成功への近道です。そう言った示唆を与えてくれる本です。皆さんもご一読されてはいかがでしょうか。