経営改善・事業再生ノウハウ集

銀行はなぜDDS(資本的劣後ローンへの転換)を躊躇するのか?

2013年10月17日

今日は、前回に続き、DDSについてお話したいと思います。

前回は企業側のメリットを中心にお話しましたが、銀行側はいかがでしょうか?

会社にとっては、メリットばかりの手法ですが、
銀行にはメリットとデメリットの両面あります。

メリットとしては主に以下のものがあります。
・企業の再生を支援することによって地域経済に貢献できる
・将来的(1年後~2年後)にDDS実行企業の債務者区分が上がり、開示不良債権が減少する
・債務者区分が上がることにより、新規貸出等を行うことができ、収益機会が増える
・当該企業への貸倒引当金が全体として減少するケースもある
・金融庁やその他関係者へ再生支援事例として報告ができ、評判が良くなる

DDS実行後の企業は、当該DDS部分を資本とみなすことができます。それを踏まえて5~10年で債務超過が解消でき、DDS以外の借入金を債務超過解消後10年程度以内で返済できる再建計画であれば、銀行としては、1~2年程度、概ね計画どおり進捗していれば、債務者区分を上げることができます。

つまり、DDS実行前の債務者区分が「破綻懸念先」である企業が、DDS実行後に「要注意先」にランクアップするということです。

銀行にとって、破綻懸念先の企業は、要注意先の企業より貸倒引当金を多く積む必要があり、また、貸出債権の全額を不良債権として開示する必要があります。

銀行の融資は、企業の債務者区分に従って可能かどうか審査します。

債務者区分が上がれば、新規融資も行いやすくなるということです。

実際に過去、私が関与した企業で、DDS実行と同時に、新規融資に応じてくれた事例もあります。

一方で、デメリットとして、主に以下のものがあります。
・貸倒引当金が増加する可能性がある
・地域内、または経営者自身にモラルハザードが生じる危険性がある

銀行は、債務者区分に従って貸倒引当金を一定の割合で積みます。
通常、貸倒引当金は債務者区分が上がれば、減少するのが一般的です。

では、DDSを実行すると債務者区分が上がるのに、なぜ貸倒引当金が増えるの?と思われるでしょう。

実は、DDS実行部分への貸倒引当金については、現状、銀行は100%引当を行うのが一般的です。通常の債権への貸倒引当金が10%や20%でも、DDS実行金額が大きければ、その部分は100%引当となるため、貸倒引当金が結果として増加する可能性があるのです。

貸倒引当金の会計処理については、日本公認会計士協会「銀行等金融機関の保有する貸出債権が資本的劣後ローンに転換された場合の会計処理に関する監査上の取扱い」で指針が出ています。
http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/32_7.html

次回以降、具体的なケースを見ていきたいと思います。

デメリットのもう一つ、モラルハザードについては、具体的には以下のようなことが起こる可能性があります。

ある企業A社へ、銀行がDDSを実行したとします。運の悪いことに噂が広まり、当該企業の存在する地域で、他の企業が「いざとなったら(業績が悪化したら)、うちもA社と同じようにDDSをしてもらえばいい」と考えるようになり、経営管理を怠るようになる危険性が出てくるというものです。
または、「A社がDDSによる支援をしてもらってるのに、なぜ当社(他の企業)へ支援をしてくれないのか?」と銀行に駆け込む経営者が出てくるかもしれません。

あるいは、経営者自身のモラルハザードとして、
「当社(A社)はDDSをしてもらったので資金繰りに余裕が出てきた。これで安心だな。」ということで、経営管理を怠る危険性が出てくるというものです。その結果、再度業績が悪化し、資金繰りに窮するということになると本末転倒です。

そのようなデメリットがあるため、DDSによる支援を躊躇する銀行があるのです。

実際の現場では、そのようなところも加味した再建計画を策定することが、銀行から支援をこぎつけるポイントになります。

孫子の兵法でいう「己を知り、相手を知れば百戦危うからず」ということですね。

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